
優待銘柄として人気の「ユキグニファクトリー(1375)」
私もずっと気になっていて、「株価が1,000円前後になったら買いたいな」と思っていました。
先日の決算発表を受けて株価が下落。ついにそのタイミングが見えてきました。
しかし決算書を見てびっくり。
「純利益が前年より89%減」と書かれています。
――えっ、そんなに悪いの?
と最初は思いましたが、調べてみると事情はまったく違いました。
実は今回の“減益”には、経営悪化ではなく特殊な会計ルールが関係していたんです。
この記事では、その「公正価値変動による利得(IAS第41号『農業』)」という少し聞き慣れない制度から、ユキグニファクトリーの今後を見ていきます。
- ユキグニファクトリーの株価が下落。なにがあったのか
- ユキグニファクトリーとはどんな会社?
- 利益が89%下落した大きな理由は?
- 公正価値会計とは?
- 出荷量はどうだったの?
- もし「前年並み」だったら利益はいくらになっていた?
- まとめ:数字だけで“悪い決算”と判断できない
ユキグニファクトリーの株価が下落。なにがあったのか

2026年3月期の中間決算(4月~9月)が発表され、株価は発表翌日に下落しました。まずは数字を確認しましょう。
※下記の「収益」はIFRSの収益(= 売上収益+公正価値利得)です。
※売上収益は前年14,988百万円 → 当年14,959百万円で概ね横ばい。
| 項目 | 2025年中間 | 2026年中間 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 収益(= 売上収益+公正価値利得) | 21,555百万円 | 19,773百万円 | ▼ 8.3% |
| 営業利益 | 1,316百万円 | 431百万円 | ▼ 67.2% |
| 税引前利益 | 1,174百万円 | 377百万円 | ▼ 67.9% |
| 当期純利益 | 741百万円 | 81百万円 | ▼ 89.0% |
| EPS | 18.59円 | 2.05円 | ▼ 89.0% |
初見の印象としては、「かなり厳しい決算」「業績急失速」という印象を受けます。
営業利益・純利益ともに7~9割減という数字はインパクトが強く、
「需要が落ち込んだのか」「コスト増か」「主力商品の販売不振か」など、
一見すると事業環境の悪化や経営ミスを疑ってしまうレベルです。
では、どうしてこんなことになってしまったのか?
ユキグニファクトリーとはどんな会社?
「まいたけ」「ぶなしめじ」「エリンギ」などを生産・販売するきのこメーカー。
売上の約99%が茸(たけ)事業。需要は安定。
株主優待(基準日:毎年3月末/継続保有要件あり) ユキグニファクトリー 1375
| セット | 必要株数・保有期間 | 内容(相当額) | イメージ |
|---|---|---|---|
| Aセット |
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3,000円相当の自社製品 例:まいたけ・ぶなしめじ等の詰め合わせ |
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| Bセット |
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5,000円相当の自社製品 例:Aセットに加え、品数・量が増量 |
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| Cセット |
|
7,000円相当の自社製品 例:Bセットよりさらに豪華な詰め合わせ |
|
配当:年間16円(中間4円+期末12円)、配当利回りは概ね約1.5%目安。
財務:自己資本比率おおむね33%前後、堅実なバランス。
利益が89%下落した大きな理由は?
今回の減益の最大要因は、公正価値変動による利得(IAS第41号『農業』に基づく)が前年から縮小したことです。
過去の公正価値変動による利得(IAS第41号『農業』に基づく)は以下です。
過去の「公正価値変動による利得」(IAS第41号『農業』)の推移
| 決算期(3月期) | 公正価値変動による利得 | 増減率 | メモ |
|---|---|---|---|
| 2021/3期 | 16,837 | — | — |
| 2022/3期 | 14,636 | ▼ 13.1% | |
| 2023/3期 | 11,188 | ▼ 23.6% | |
| 2024/3期 | 14,033 | ▲ 25.4% | |
| 2025/3期 | 16,037 | ▲ 14.3% | |
| 2026/3期(△予想) | 13,080 | ▼ 18.4% | 会社見通しベース |
この評価益の減少が、営業利益・純利益を大きく押し下げました。経営の実力が急に悪化したのではなく、帳簿上の評価の見え方が変わったのが主因です。
ではなぜ、この評価が変わると営業利益・純利益を大きく影響するのか見ていきます。
公正価値会計とは?

公正価値変動による利得(IAS第41号『農業』に基づく)とは、農業・畜産のように生物資産を扱う企業が、その成長段階の時価変動を損益計算書に反映させる仕組みです。

ユキグニファクトリーでは、育成中のきのこ(上記画像:左から二番目)に「いま時点での公正価値」を付け、その評価差額を利益・費用に計上します。
天候や市況で毎期変動しやすく、実際の販売と直結しない“非現金”要素である点がポイントです。
出荷量はどうだったの?
「減益=売れなかった」ではありません。
決算の説明では、主力のまいたけの販売数量は抑制しつつ、販売単価の引き上げで売上をカバーした旨が示されています。
価格を維持し収益性を守るための戦略的な数量調整です。
事業区分別 売上収益(2026年3月期中間)
| 事業区分 | 売上収益 | 前年比 |
|---|---|---|
| まいたけ | 7,562 | ▼0.7% |
| エリンギ | 1,780 | ▲2.3% |
| ぶなしめじ | 3,244 | ▲6.4% |
| その他の茸 | 2,212 | ▼9.0% |
| その他事業(加工等) | 159 | ▲6.2% |
まいたけはほぼ横ばい。数量は抑制したものの、単価で補い、売上は維持しました。
もし「前年並み」だったら利益はいくらになっていた?
評価益が前年と同水準だった場合の試算
| 指標 | 実績(2026中間) | 仮定:前年並み | 差額 |
|---|---|---|---|
| 営業利益 | 431 | 1,541 | +1,110 |
| 税引前利益 | 377 | 1,487 | +1,110 |
| 純利益 | 81 | 931 | +850 |
| EPS(円) | 2.05 | 約23.3 | +21.3 |
まとめ:数字だけで“悪い決算”と判断できない
今回の減益は、会計上の「公正価値変動による利得」縮小による見え方の問題が大きく、本業の悪化を意味するものではないと考えています。
まいたけの出荷量は意図的に抑え、単価で収益を維持する戦略を取っており、事業の基盤はむしろ安定しています。
仮に評価益が前年並みだったとすれば、純利益は約11倍の水準。数字の印象ほど業績が悪化しているわけではありません。
株主優待と配当の魅力も引き続き健在。
6ヶ月以上の継続保有が条件なので、来年3月の権利確定には間に合いませんが、
長期でじっくり保有したい銘柄だと思います。