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シャインマスカット流出はなぜ起きた?紅ほっぺ・べにはるかまで農業IP問題を解説

シャインマスカット流出と農業IP問題のアイキャッチ画像

シャインマスカットの海外流出をきっかけに、日本の果物や野菜の「農業IP」がまた注目されています。「テレビでそんなニュース見たかも」と、調べてみるとイチゴ、サクランボ、カンキツ、サツマイモまで話が広がっていました。

 

え、シャインマスカットだけじゃなかったの?そう感じた方も多いと思います。今回は、農林水産省や農研機構の資料をもとに、どんな品種で海外流出や種苗販売の問題が指摘されているのかを整理します。


 

シャインマスカット流出で何が起きた?

農研機構によると、シャインマスカットは日本で開発され、2006年に国内で登録されたぶどう品種です。ただ、当時は国内での普及を想定していたため、海外での登録までは考えられていなかったと説明されています。その後、中国や韓国へ流出し、現地で栽培されるようになりました。

 

農水省資料では、中国でのシャインマスカット栽培面積は日本の約30倍に広がり、許諾料換算で年間100億円以上の損失が発生しているとされています。ここだけ見ると「なぜ止められなかったの?」と思いますよね。


 

紅ほっぺやべにはるかも?海外で名前が確認された品種

では、他にも海外で無断に栽培されている野菜や果物はあるのでしょうか。農水省資料には、海外サイト上で日本の登録品種名、またはそれに似た名称で販売が確認された例が載っています。ただし、掲載された商品が日本の登録品種そのものか、同じような名前を付けた別品種なのかは特定していない、と注記されています。

 

つまり、すべてを「無断栽培確定」と言い切るのは難しいです。そこで下の表では、資料上で確認されている内容と理由をまとめてみました。

品種・品目 確認された内容 漏れた理由・注意点 情報源
シャインマスカット 中国・韓国で栽培が広がり、東南アジア市場でも中国産・韓国産が確認されています。 海外登録が十分でなかったこと、改正前の種苗法では正規購入後の海外持ち出しを止めにくかったことが背景です。 農水省資料
章姫・レッドパール 韓国で広く栽培され、後に韓国で開発された品種への置き換わりも進みました。 許諾先に渡った種苗が漏れ、韓国でイチゴの保護制度が整う前だったため、権利保護が難しかったとされています。 農水省検討会資料
紅ほっぺ 中国で主要なイチゴ品種として栽培拡大した例として紹介されています。 種苗の流出経路は不明。イチゴは株を増やしやすく、一度外へ出ると管理が難しくなります。 農水省資料
紅秀峰 山形県のサクランボ品種がオーストラリアへ流出し、刑事告訴に発展した事例があります。 国内で増殖された苗木が、育成者権者に無断で海外関係者に渡ったと説明されています。 農水省説明資料
不知火・デコポン系 韓国では「漢拏峰」、米国では「Sumo Citrus」として知られる例が紹介されています。 育成者権が国内外でないため、違法流出というより「利益が日本へ戻らない」タイプの問題です。 農水省検討会資料
べにはるか 海外サイト上で販売が確認された日本の登録品種名一覧に、サツマイモ品種として掲載されています。 実物確認まではされていません。サツマイモは苗やつるで増やしやすい作物なので、管理の難しさがあります。 農水省白書資料
クイーンニーナなどのブドウ シャインマスカット以外にも、ブドウ4品種の名称が海外サイトで確認された一覧に含まれています。 果樹は苗木が残ると長く栽培されます。海外登録、流通管理、監視が遅れると対応が難しくなります。 農水省資料
さがほのかなどのイチゴ イチゴ10品種の名称が、海外サイトで販売確認された一覧に入っています。 イチゴはランナーで増えやすい一方、資料上は名称確認であり、全てを同一品種と断定できません。 農水省白書資料
はるみ・せとかなどのカンキツ その他カンキツ10品種、ウンシュウミカン1品種の名称が海外サイトで確認された一覧に含まれています。 苗木や穂木の管理に加え、品種名と流通名、商標をどう守るかも課題になります。 農水省白書資料


 

なぜ日本の品種なのに止められなかったのか

大きな理由は、昔の制度では「正規に買った種苗の海外持ち出し」を止めにくかったことです。農水省の品種登録制度パンフレットでも、改正前の種苗法では、登録品種が販売された後に海外へ持ち出されることを阻止できなかったと説明されています。

それに加えて、農作物は工業製品と違います。苗木、株、つる、穂木があれば増やせるものがあります。いったん海外へ出てしまうと、どこで誰が増やしているのかを追うだけでも大変です。ここが、スマホや家電の模倣品とは違う難しさですね。

しかも、海外で権利を主張するには、その国で品種登録をしておく必要があります。日本で登録されているだけでは、海外で自動的に守られるわけではありません。


 

農業IP機関で今後はどう変わる?

今回のニュースで出てきたのが、育成者権を持つ人に代わって、海外での品種登録や無断栽培の監視を行う機関です。FNNは、農林水産省などが2026年8月をめどに立ち上げると報じています。農水省の白書資料でも、育成者権管理機関の早期立ち上げ・事業化を目指す方針が示されています。

この機関が目指すのは、単に「海外で作るな」と止めることだけではありません。信頼できる海外パートナーと契約し、正規のライセンスで作ってもらい、ロイヤルティを新品種の開発へ戻す。つまり、守るだけではなく、きちんと稼いで次の品種づくりにつなげる仕組みです。

実を言うと、ここが一番大事だと思います。私たちがスーパーでおいしい果物を買えるのは、誰かが長い時間をかけて品種を作ってくれているからです。シャインマスカットも、農研機構の資料では開発に長い年月と多くの労力がかかったと説明されています。


 

これからも美味しいものが食べられるように!

この話は、農家さんや国だけの問題に見えます。でも、日本の品種が守られず、開発した側にお金が戻らなければ、次のおいしい品種を作る力が弱くなるかもしれません。

もちろん、海外で作られたものを全部悪者にする話ではありません。正規契約で作られ、ルールに沿って流通しているものもあります。見るべきなのは、国籍ではなく、品種を作った人にきちんと利益が戻る仕組みになっているかです。

シャインマスカット流出の教訓は、「おいしいものを守るには、味だけでなく権利も守らないといけない」ということだと思います。紅ほっぺ、べにはるか、カンキツ類まで名前が出てくると、かなり身近な問題に感じますよね。今後は、2026年8月をめどとされる育成者権管理機関が、どこまで海外登録・監視・法的対応を進められるのかを見ておきたいところです。

参考:FNNプライムオンライン農研機構「魅力ある新品種を開発・保護し、日本農業に貢献」農研機構「優れた品種が支える日本の農業」農研機構プレスリリース農林水産省 令和7年度白書資料農林水産省 輸出拡大実行戦略資料農林水産省 品種登録制度パンフレット