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【SNSで物議】相続税が払えないと土地が最大93%引きで売られる?話題をファクトチェック|相続土地国庫帰属制度とは

「相続税が払えなかったら、国が土地を最大93%安く売る?」

SNSで広がったこの話、気になりませんか?そんな詐欺みたいな話が本当なのか調べてみました。

 

財務省が2026年6月17日に示したのは、相続土地国庫帰属財産の新しい評価方法です。「現状有姿売買」の導入方針自体は同年2月に示されており、6月の資料で価格修正の仕組みが具体化されました。これがどういったわけか、「相続税が払えなかったら、国が土地を最大93%安く売る?」という話になっていました。

 

内容は、決して相続税を払えない人の土地を国が安く買い取る制度ではありません。

対象は、一定の条件を満たして相続土地国庫帰属制度により、すでに国庫に帰属した土地のうち、財務局等が引き受けた宅地や「その他」の土地です。

農用地や森林は、今回の財務省資料による評価見直しの直接の対象ではありません。市場性が乏しく、国庫帰属後も売却に至らない土地の管理コストを減らし、地域で使えるようにするため、売却価格の決め方を見直す方針が示されました。


 

国が最大93%引き下げるのは、どんな土地?

相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈で取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡せる制度です。2023年4月27日に始まりました。建物がある土地、境界が明らかでない土地、一定の基準を超える土壌汚染がある土地などは対象外です。

 

申請には1筆1万4,000円の審査手数料がかかり、承認後には、10年分の標準的な管理費用を基にした負担金を納付します。負担金は1筆20万円が基本ですが、一部の市街地の宅地、農用地区域などの田畑、森林は面積に応じて算定されます。同じ種目の土地が隣接している場合は、複数筆の負担金を合算する申出もできます。なお、審査手数料は申請が却下・不承認となった場合でも返還されません

 

財務省の資料では、2026年3月末時点で国庫帰属件数は2,606件。このうち、宅地948件と「その他」638件の合計1,586件を財務局等が引き受けています。市場性が乏しい土地も多く、財務局等が管理する土地については、従来の一般競争入札などによる売却を進めてきたものの、この制度で国庫に帰属した土地はまだ売却に至っていませんでした。

 

今回の見直しは財務局等が管理することになった土地を、どうすれば地域で使ってもらえるかという話です。


 

相続税の物納と、不要な相続土地を手放す制度は別

相続税の物納は、延納しても現金で納めることが困難な場合に、一定の相続財産で相続税を納める手続きです。申請先は税務署で、国内にある一定の相続財産が対象となり、誰でも好きな土地を選んで出せるわけではありません。境界が明らかでない土地など、管理・処分に向かない土地は物納にも使えません。

相続税の物納とは

通常、相続税は現金で納めます。しかし、

  1. 現金で一括納付できない
  2. 分割払いの「延納」を使っても支払いが難しい
  3. 税務署の審査を通る相続財産がある
  4. 相続税の納期限または納付すべき日までに申請書類を提出する

という場合に、土地などの相続財産を国へ渡して、相続税の支払いに充てる制度です。物納できるのは、現金での納付が困難と認められた金額までです。

 

 

一方の相続土地国庫帰属制度は、相続した土地だけを手放したい人が検討できる選択肢の一つです。相続放棄では土地だけを選ぶことはできず、預金や負債なども含めて相続全体を放棄することになるからです。相続土地国庫帰属制度は税金の納付方法ではなく、土地を国庫に帰属させる手続きです。相続税が発生していないケースでも、要件を満たせば検討できます。

比べる点 相続税の物納 相続土地国庫帰属制度
目的 相続税を納める 不要な相続土地を国へ引き渡す
主な窓口 税務署 土地所在地の法務局・地方法務局本局
今回の価格見直し 直接の対象ではない 国庫帰属後、財務局等が管理する宅地・その他の土地が対象


 

「最大93%引下げ」は、すぐに93%安くなる意味ではない

財務省は、財務局等が管理する対象土地の財産情報と参考価格をホームページで示し、国・地方公共団体・一般から3か月間、取得・買受け等の要望を受け付ける方針です。
以下のリンクからそれらの物件を見ることができます。

lfb.mof.go.jp

受付終了後は、要望者の数や属性に応じて、随意契約または一般競争入札へ進みます。要望がなければ、現状有姿売買のリスクを反映した価格修正を行ったうえで掲載を続け、改めて要望を受け付けます。

 

随意契約が使われるのは、買い手が隣接地の所有者だけの場合、または隣接地の所有者以外でも買い手が1者だけで予定価格が100万円以下の場合です。それ以外は一般競争入札が前提です。価格を職員による簡易な方法で評価できるのも、宅地なら1,000㎡以下かつ概算評価額5,000万円以下、宅地以外なら概算評価額3,000万円以下の土地に限られます。

 

この職員による簡易評価と段階的な価格修正は、上記の条件で随意契約の対象となる土地に適用される仕組みです。すべての国庫帰属地が一律に最大93%引き下げられるわけではありません。

 

その価格は、相続税評価額を基礎にした当初の評価額を100とすると、現状有姿売買によって買主へ移るリスクを反映し、まず標準で30%修正して70となります。その後も要望がなければ、3か月ごとに需要がないことを確認し、70に対する残価率を90%、80%……10%と段階的に下げます。結果として価格は63、56、49……7となり、計算上は当初評価額から最大93%の引下げに相当します。

資料のイメージでは、最初の3か月の要望受付が終了してから最も低い水準へ達するまで2年3か月。最初の3か月の受付期間も含めると、掲載開始から約2年半かかる計算です。しかも、100は周辺相場そのものではなく、相続税評価額を基礎に算定した評価額です。「相場より93%安い土地が最初から買える」という意味ではありません。

実際の対象物件、参考価格、要望受付期間、売却方法、契約条件については、各財務局等が公表する物件情報を個別に確認する必要があります。

 

安く見えても、買う側が引き受けるリスクは大きい

財務省の「現状有姿売買」の導入方針では、国は測量や境界確定協議、地下埋設物・土壌汚染の調査を行いません。境界が不明確なことなどによって買主に損害が出ても、売主である国は責任を負わない条件が置かれます。

 

なお、国庫帰属の申請段階では、申請者が認識する境界と隣地所有者が認識する境界に食い違いや争いがないことが必要です。ただし、確定測量や境界確認書の提出までは求められていません。そのため、「申請時に境界争いがないこと」と「売却時に国が測量・境界確定を行わないこと」は矛盾しません。購入する側で追加の測量や確認が必要になる可能性があります。

隣の土地を広げたい人や、細長い空き地を駐車場・通路として使いたい人には意味があるかもしれません。でも、建物を建てられるか、道路に接しているか、境界や造成にどれだけ費用がかかるかは別問題です。

投資やマイホーム用に「安いから」と決める前に、現地確認、法規制、接道、境界、地下埋設物、土壌汚染、撤去・造成費用を専門家と確認する必要があります。

相続税を現金で払えない場合:まず税務署で延納・物納の要件と申請期限を確認
相続土地を手放したい場合:法務局へ相談し、民間売買・隣地所有者への譲渡・寄附・国庫帰属などの選択肢を比較
国有地の購入を考える場合:財務局の物件情報だけで決めず、現地と権利関係を確認

一定の条件を満たす土地における計算上の最大93%引下げは、売れない土地を放置せず、国の管理負担を減らすための価格調整です。相続した土地の処分で困っているなら、「相続税の物納」と混同せず、まずは土地が国庫帰属の要件を満たすか、近隣や民間に引き受け手がいないかを早めに確かめておきたいですね。

参考リンク

※この記事は2026年7月11日時点で公表されている資料に基づいています。制度の利用可否や相続税の納付方法は、土地の状態や相続財産全体で変わります。また、国有地の実際の売却条件や価格は、各財務局等が公表する物件情報をご確認ください。個別の判断は税務署、法務局、税理士、司法書士、土地家屋調査士などにご相談ください。