
「食品の値上げはなぜ続くのか」
「来年は値上げが落ち着くらしい」そんな言葉を最近よく見かけます。数字だけを見ると、たしかにそう見えなくもありません。
でも、資料をきちんと読むと、もっと大事な変化が見えてきました。
今回は、帝国データバンクの調査(「食品主要195社」価格改定動向調査)をもとに、2025年に何が上がったのか、そしてなぜ2026年も下がりにくいのかを整理します。
値上げは「落ち着く」より「定着」してしまった!?
食品の値上げは「終わる」方向ではなく、「当たり前として続く」方向に寄っています。

調査によると、2025年の飲食料品の値上げは合計2万609品目。前年(1万2520品目)を約6割上回り、2年ぶりに2万品目を超えました。2026年は4月までの判明分で3593品目と、前年同時期より少ないペースです。
ただし、品目数が減る=安心ではありません。値上げの形が「ラッシュ型」から「じわじわ型(常態化)」へ変わった、と受け取ったほうがしっくりきます。
2025年に何が値上がりした?
2025年は、生活のど真ん中が広く値上げの対象になりました。ここでは、特に「体感しやすい」ものを中心にまとめます。

パン(食パン・菓子パン)
1月は、食パンや菓子パンで約2年ぶりの一斉値上げがありました。パンは日常的に買う人が多いので、値上げの実感が出やすい分野です。
乳製品(バター・チーズなど)
3月は、バターやチーズなど乳製品の値上げが目立ちました。乳製品は冷蔵・冷凍の管理が必要で、原材料だけでなく、エネルギーや物流の影響を受けやすいのも特徴です。
調味料(マヨネーズ・ドレッシング・味噌)
4月は、ドレッシングや味噌など調味料が広く対象になりました。調味料は原材料の種類が多く、さらに容器やラベル、箱など資材も必要です。「どれか1つが下がれば戻る」という構造ではないのが、厄介なところです。
冷凍食品・加工食品(即席めん・パックご飯など)
冷凍食品や即席めん、パックご飯などの加工食品も広い範囲で値上げがありました。冷凍は「作る」「冷やす」「運ぶ」でコストが積み上がりやすく、原材料だけでなく、エネルギーや人件費、物流費の影響が出やすい分野です。パックご飯はコメの価格高騰を受けた値上げも指摘されています。
酒類・飲料(ビール・酎ハイ・焼酎など)
4月にはビールや酎ハイなど酒類、10月には焼酎や日本酒などアルコール飲料を中心に一斉値上げも起きています。飲料は容器(缶・PET)や運ぶコストの影響が出やすく、ここでも「モノ以外のコスト」が効いてきます。
原因は「原材料」だけじゃない
値上げの理由で最も多いのは原材料高です。2025年も2026年も、この流れは基本的に変わりません。

ただ、今回の資料で見逃せないのは、物流費と人件費、包装・資材費といった「サービス由来のコスト」が大きくなっていることです。特に2025年は、物流費(78.6%)や人件費(50.3%)の割合が集計可能な2023年以降で最高となり、人件費は前年からほぼ倍増したとされています。
原材料は上下しても、人件費や物流費、資材費は一度上がると戻りにくい。ここが「下がらない」感覚につながっていると思います。
2026年は品目が減っても「下がらない」理由
2026年は1〜4月までの判明分で3593品目。前年同時期より約4割減のペースです。
でも資料では、月4,000品目を超えるような局所的なラッシュは起きにくい一方で、1,000品目前後の値上げは2026年も常態化する、としています。つまり「派手に上がる」より「静かに上がり続ける」方向です。

さらに、2026年の値上げ要因として円安由来は1.6%と過去最低水準。外の要因(為替)より、内側の要因(物流・人件費・資材)で押し上げられるなら、値下げ局面が来にくいのは自然です。
この資料の本質:外圧→内圧への構造転換
この資料の本質は、「値上げが何品目あったか」だけではありません。もっと重要なのは、値上げの原因が外圧(円安・エネルギーなど)から、内圧(物流費・人件費など)へ寄っていることです。
外圧が主因なら、状況が変われば落ち着く余地があります。でも内圧が主因になると、コスト構造そのものが変わるので、戻りにくい。ここが「2026年も下がらない」と考える最大の理由です。

また、2025年の発表分では「減量(実質)値上げ」の割合が1割前後にとどまり、2022〜23年の3割超を大幅に下回った、とも示されています。値上げが当たり前になり、企業も消費者も「隠す/驚く」フェーズから、「受け止める」フェーズへ移りつつあるように感じます。
出典
帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査 ― 2025年通年/2026年見通し」(2025/12/26発表)
※品目数は各社発表に基づき、年内に複数回値上げした品目は別品目としてカウント。内容量減などの「実質値上げ」も対象に含む。
まとめ
2025年は、食品の値上げが「特別」ではなく「日常」になった年でした。パン、乳製品、調味料、加工食品、酒類・飲料と、生活に近いところが広く対象になっています。
2026年は値上げ品目が減るペースでも、安心はできません。原材料だけでなく、人件費・物流費・包装資材といった「戻りにくいコスト」が価格を押し上げているからです。
「また上がった」で終わらせず、なぜ戻らないのかを知っておくと、買い物の判断が少しラクになります。私はこれからも、売り場の変化を冷静に追いかけていきます。